Re:START! ~君のバンドに、入ります~

 気になって、その動画の一か月後、さらに一か月後……というようにいくつか音声を聴いてみた。

 ――すごい。

 だんだんうまくなっている。

 三人のはっきりとした成長の様子が分かった。

 きっと、一生懸命練習してうまくなっていったんだ。

 こんな風に練習ごとの音を残しているのも、彼ら自身が復習するためなのかな。

 なんてことを、思っていると。


「お、詩乃。バンドの曲聞いてんのかい?」


 急に背後から、お父さんに話しかけられた。

 いつの間にか見られていたらしい。


「え……。う、うんちょっとね」

「ギターもベースもいい音出てるね。詩乃、もしかしてやってみたい?」


 お父さんが楽しそうに言う。

 実はお父さんは、学生時代に友達とバンドを組んでいたんだ。

 就職して練習する時間が無くなってやめちゃったけど、結構本気でやっていたんだって。

 だから私がバンドに興味を持っているように見えて、嬉しかったのかもしれない。


「そ、そういうわけじゃないよ」


 作り笑いを浮かべてそう答える。
 
 もちろん興味はあるけれど、自分でやりたいわけじゃない。