そうして辿り着いたのは、両親のいる場所。
道筋で求めた赤い花は、雨で少し濡れていた。

まだ大雨は降らない。
この大地を潤すには、全然足りないかもしれないけれど。


『……綺麗、よね』


すっかり晴れてしまった空が、花弁に光を注いでいた。
キラキラと反射して、ちょっと眩しい。


『あのね、ロイが来てくれたら……』


豪華じゃなくていい。
ふんわりしたお姫様ドレスや、うっとりする滑らかさの生地でなくていいのだ。
もちろん憧れはあるが、それより他に優先したいものがある。

どうにかして、ヴェールは手作りしたいし。
下手でもいいから――努力は惜しまないが、自らの不器用さを侮ってはいない――想いを込めたい。

黒髪に白のヴェール。
白のドレス。
それに――この赤い花。


『似合うかな? ロイはきっと、本当に王子様らしく格好いいと思うけど。でも私も、この時くらいは……』


(大人しく、は無理かも)


ドレスの裾を踏んづけて、転びそうになるかもしれない。
それでも堅苦しい式ではなくて、皆笑っていたらいいと思う。


『でもね、ほら……』


やっぱり、元気なこの花が似合う気がする。