「はいはい。気、済んだ? 」


顔面に当たっても、それほど痛い訳もなく。


「あんまり可愛いことしてると、また襲われちゃうよ」


再会したばかりの今は特に、何をされても可愛いのだ。
やっと会えた、大好きな女の子。
彼女の考えなしの行動が、どれほど自分に熱を孕ませるのか。


「だって、ロイが急に……」

「急にじゃないよ。言わなかったっけ?」


――僕、ちゃんと男だからね。


「君がそう言うならしてみようか? ……そんなこと」


苛立ちが声に表れたかもしれない。
彼女には急な変化でも、こっちにしてみればひたすら堪えていただけなのだ。


「……あ、わ、私……」


捕らえた体がピクリと震えた。


(……女の子、だもんな)


つい最近、初めて許したばかりなのだ。
それをこう頻繁に求められても、混乱するものかもしれない。
体だって、もっと気遣ってあげるべきだった。


「ごめん。僕が悪かった……」


腕を緩めようとしたとたん、ジェイダがしがみついてきた。


「違……分かってるから……ロイが大切にしてくれてるのは知ってるから」

「ジェイダ……」


そう言われると痛いものがある。
熱に浮かされたのだって事実なのだし。


「だ、だけど……! ご存知の通り、初心者なので……!! その……」


加えてそんなことを主張されて、いっそう引きずり込んでしまいたくなる。


「分かってる。……ありがとう、ジェイダ」


けれども、この愛情を失いたくはない。
手を横たえると決めた時、彼女はどんなに勇気が要っただろうか。
それを想像すると、嬉しくて愛しくて――満たされるのだ。
アルバートではない、ロイというただの男が。