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「ごめんね。一片だけ」


謝りながらあの花を思い浮かべると、赤い花弁がひらひらと舞った。


「……その花、好きだね」


目を閉じれば、どうしたって悲しい思いも蘇るけれど。


「嫌いになる訳ないわ。だって、あなたにも貰ったでしょう。ロドニー」


困り顔を浮かべる、彼の体温を感じる。
近くに来てくれたのだ。


「そうだね」


いつもふんわり抱く腕が、ぎゅっと力を込めてきた。
それはとてもあたたかで、胸の奥がか細い悲鳴を上げる。
切なさは時に、心をきゅっと締めつけるけれど。


「うん。やっぱり、君によく映える」


ロドニーがにっこりしている。
彼の強さに、どれだけ救われてきただろうか。
そう思うとひどく泣きたくなって、つと指先を彼の胸に滑らせた。

空の下、皆が笑顔だ。
あの娘はどこか夫にそっくりで、彼女が幸せいっぱいに笑っていると余計に涙を誘われてしまう。


「いいんじゃないかな。おめでたい日に泣いたって」


何でも彼はお見通しで、愚図るジェマの視線を半ば無理に上向かせた。


「僕らが地上にいて、あの場でお祝いできたとしても。どっちにしても大泣きしてると思わない? それはちょっと恥ずかしいから、これでよかったんだよ」