「決めました。ここにします」

 情報誌で見た段階で九割方決めてはいたけど、実際に内覧して、外観は写真のまんまだったけれど内装は思ったよりキレイだったので即決した。
 名前のおかげだろう。「あ、八重樫さんのところの」と言われたのでにこりと笑えば、契約書を書き終えた時点で鍵をもらえた。電気水道ガスを開通して、寝具を運べばすぐにでも住めるのがありがたい。早速、通販サイトで手頃な値段の敷き布団一式をぽちっとした。明日届くらしいので、明日から別居開始だ。
 八重樫の名前を出されて、一瞬、やめておいた方がいいかなとは思ったけれど、あの人は、煌明さんは、私に興味がない。一応、別居の件については事後にはなるが報告するつもりだ。ご飯はちゃんと作ることと性欲処理に関してはプロだろうが素人だろうが黙認するということを伝えれば、おそらく文句は言われないだろう。
 ああ、どうしよう。
 今、ものすごくわくわくしている。