『お前は自分で選んだ道を進んでいいんだ。周りの誰から何を言われても、自分の人生は自分で決めなさい。もしその道が行き止まりになったとしても、自分で選んだ道なら、きっと後悔はしないだろう。例え後悔したとしても、それも人生を彩る経験としてお前の財産になるはずだから―――――』



いつかの父親のセリフが、記憶の中で妙に大きく響いていた今日この頃。
おれは、実家に向かっていた足をふと止め、行き先を変更をすることにした。


二年前、地元を離れるとき、未来には明るい道しかないと思い込んでいたおれを、華やかに送り出してくれたあの桜並木。
それを、もう一度見てみたくなったのだ………



高校時代、野球部で主将をしていたおれは、甲子園出場をかけた地方予選の決勝まで登りつめ、一点差で惜しくも母校の初出場は叶わなかったものの、大学のスカウトの目にとまり、スポーツ推薦枠での進学が決まった。
両親ともに教師という家庭で育ち、周りの誰もがおれも教師という職業を選ぶのだろうと思っていた、そんな中でのスカウトだったので、心配する声も少なくはなかった。

当時のおれには、そういった外野の声がとても甲高く聞こえてきたもので、スカウトの返事をした後でさえも、果たしてこれで本当によかったのかと悩む日が続いた。
両親が教師だからといって、子供までもが教師にならなくちゃいけないなんて決まりはないし、どちらかと言えば、いつも忙しそうにしている両親を見てきたので、教師という職業に憧れなども持っていなかった。
むしろ、人生の選択肢から除外したいほどだったかもしれない。
そんなおれに、父はいかにも教師らしい言い方で、だが父親らしい包容力で、自分の将来は自分で決めろと、すべてを委ねてくれたのである。


だがその一年と半年後、おれは、この時心配してくれていた人達の顔を思い返すこととなったのだから、人生とはままならないものである。