そして、わたくしは、世界的に有名な伊集院グループの会長、伊集院 雅也(いじゅういん まさや)と、その妻、美波の愛娘、伊集院 心愛(いじゅういん ここあ)

俗に言う生粋のお嬢様で、この大きなお屋敷で、蝶よ花よと何不自由なく育ってきた。

幼稚舎から今の高等部まで、名家の令嬢・令息が数多く在籍する私立華の園学院に通い、令嬢としての教養は人一倍あると自負している。

でも、それはこの家の娘として当然の努めであるし、特にすごいとも思っていない。

「仲がよろしいのは喜ばしいですが、心愛様!早くご準備を!」

メイドが悲鳴のように叫ぶ。

「言われなくても分かってるわよ。食事は…そうね、車の中でいただくわ」

「お嬢様。本日のご予定は……」

わたくしが着替えている横で、何も気にせずに今日の予定を言おうとする優雅。

「学校から帰ったら、茶道、華道、でしょ!着替えてるんだから、出ていって」

「その後に、お父様とのお食事がございます。」

え……お父様帰ってくるの?

お母様が亡くなってから、お父様とはあまり仲良くない。

「では、私は車を玄関の方へまわしておきますので。準備ができ次第、そちらへ向かわれて下さい」

そう言って、優雅は出ていった。