アニエスたちがフォールに到着すると兵士たちが大喜びで出迎えた。
馬から降りると開口一番、ベルナールが聞く。
「ムンドバリの攻撃はどうなった」
「完膚なきまでに痛めつけました。当分、襲ってこないでしょう」
アンリ・バルゲリーが胸を張る。
兵士たちも口々に言った。
「俺たちには嬢ちゃんとカサンドルさんがついてる」
「どこにも痛みがなく、体調も万全で戦えるってことが、どれだけ力になるか」
「我が軍に勝てる者はいません」
ベルナールは満足そうに頷いた。
「して、閣下の首尾は?」
目をキラキラさせる兵士たちに、ベルナールは力強く言った。
「すぐに神官に連絡し、明日にでも結婚式を行う」
おおう! と歓声が上がる。
アニエスは兵士たちにもみくちゃにされながら、城の本館に向かった。
「嬢ちゃん、なんだか綺麗になったな」
「嬢ちゃんもだが、閣下がなんだかツヤツヤだぞ」
「なんだなんだ、もうアレか?」
このこの、とにやにや笑われて恥ずかしくなった。
ソフィが兵士たちをたしなめ、ああだこうだと騒ぎながらも、彼らは兵舎に戻っていった。
「おかえりなさい、アニエス」
「疲れたでしょう? 甘いお菓子が用意してありますよ」
ソフィとカサンドルに迎えられて、じわりと胸が熱くなる。
ベルナールが言ってくれたように、今はフォールの人たちがアニエスの家族なのだ。
安心して甘えられる相手がいる。花の中に包まれるようにふわふわと幸せだった。
結婚式の準備はあっという間に調った。
真っ白なドレスは真新しいもので、ソフィとカサンドルとで見立てて用意してくれていた。
「勝手に用意してごめんね」
「気に入るといいんだけど」
アニエスには、まだドレスの選び方がわからない。二人が選んでくれたものが一番いいと思えた。
「すごく素敵。嬉しい! ありがとう!」
あれよあれよという間に、翌日にはフォートレルの北にある神殿で結婚の誓いを交わす段取りが整った。
午前中に馬車に乗り込んだベルナールとアニエスは、騎馬の兵士に先導されて神殿に向かった。
後ろにはソフィとカサンドルの馬車が続き、その後ろを騎馬隊の長い列が進む。みんな正装をしていて、いつものゴツイ兵士たちとは別人のようだった。
ベルナールは嘘みたいにかっこよかった。
神殿の前で馬車を降り、白いドレスのアニエスに手を差し出す姿はまるで物語の中の騎士のようだ。
街道に集まった人たちもうっとりと見惚れる。
アニエスが横に並ぶと、ほうっと一斉にため息が漏れ、夏の朝の空気をかろやかに震わせた。
「綺麗な花嫁さんだこと」
「あの聖女のお嬢ちゃんが、こんなに美人だったとはなぁ」
みんな口々にアニエスを褒めた。
「とても綺麗だ、アニエス」
ベルナールにまで褒められて、なんだか泣きそうになる。
アニエスは慌てて、笑ってみせた。
「初めて会った時は、汚ねえ女だなっ言ったのに」
「まだ、それを言うか」
ベルナールは笑い、それから「一生、言われてもいい」と言った。
「一生、俺のそばにいてくれ。何を言ってもいいから」
アニエスは誰より素敵な辺境伯閣下を見上げて、にこりと笑った。
神殿で奏でられる楽の音がフォートレルの街を流れてゆく。
遠回りして街を一周しながら城に帰った。見物に出てきた人はみんな笑顔でアニエスたちに手を振ってくれた。
馬から降りると開口一番、ベルナールが聞く。
「ムンドバリの攻撃はどうなった」
「完膚なきまでに痛めつけました。当分、襲ってこないでしょう」
アンリ・バルゲリーが胸を張る。
兵士たちも口々に言った。
「俺たちには嬢ちゃんとカサンドルさんがついてる」
「どこにも痛みがなく、体調も万全で戦えるってことが、どれだけ力になるか」
「我が軍に勝てる者はいません」
ベルナールは満足そうに頷いた。
「して、閣下の首尾は?」
目をキラキラさせる兵士たちに、ベルナールは力強く言った。
「すぐに神官に連絡し、明日にでも結婚式を行う」
おおう! と歓声が上がる。
アニエスは兵士たちにもみくちゃにされながら、城の本館に向かった。
「嬢ちゃん、なんだか綺麗になったな」
「嬢ちゃんもだが、閣下がなんだかツヤツヤだぞ」
「なんだなんだ、もうアレか?」
このこの、とにやにや笑われて恥ずかしくなった。
ソフィが兵士たちをたしなめ、ああだこうだと騒ぎながらも、彼らは兵舎に戻っていった。
「おかえりなさい、アニエス」
「疲れたでしょう? 甘いお菓子が用意してありますよ」
ソフィとカサンドルに迎えられて、じわりと胸が熱くなる。
ベルナールが言ってくれたように、今はフォールの人たちがアニエスの家族なのだ。
安心して甘えられる相手がいる。花の中に包まれるようにふわふわと幸せだった。
結婚式の準備はあっという間に調った。
真っ白なドレスは真新しいもので、ソフィとカサンドルとで見立てて用意してくれていた。
「勝手に用意してごめんね」
「気に入るといいんだけど」
アニエスには、まだドレスの選び方がわからない。二人が選んでくれたものが一番いいと思えた。
「すごく素敵。嬉しい! ありがとう!」
あれよあれよという間に、翌日にはフォートレルの北にある神殿で結婚の誓いを交わす段取りが整った。
午前中に馬車に乗り込んだベルナールとアニエスは、騎馬の兵士に先導されて神殿に向かった。
後ろにはソフィとカサンドルの馬車が続き、その後ろを騎馬隊の長い列が進む。みんな正装をしていて、いつものゴツイ兵士たちとは別人のようだった。
ベルナールは嘘みたいにかっこよかった。
神殿の前で馬車を降り、白いドレスのアニエスに手を差し出す姿はまるで物語の中の騎士のようだ。
街道に集まった人たちもうっとりと見惚れる。
アニエスが横に並ぶと、ほうっと一斉にため息が漏れ、夏の朝の空気をかろやかに震わせた。
「綺麗な花嫁さんだこと」
「あの聖女のお嬢ちゃんが、こんなに美人だったとはなぁ」
みんな口々にアニエスを褒めた。
「とても綺麗だ、アニエス」
ベルナールにまで褒められて、なんだか泣きそうになる。
アニエスは慌てて、笑ってみせた。
「初めて会った時は、汚ねえ女だなっ言ったのに」
「まだ、それを言うか」
ベルナールは笑い、それから「一生、言われてもいい」と言った。
「一生、俺のそばにいてくれ。何を言ってもいいから」
アニエスは誰より素敵な辺境伯閣下を見上げて、にこりと笑った。
神殿で奏でられる楽の音がフォートレルの街を流れてゆく。
遠回りして街を一周しながら城に帰った。見物に出てきた人はみんな笑顔でアニエスたちに手を振ってくれた。