花奈の美貌は黒さを持ち、不気味にも見えるが、魔女のように妖艶な美しさにも見えた。

花が水気を失い、枯れ、生への執念から、毒素を持つことで生き生きとしているような。

「ふふっ、それはこっちのセリフでしょう?スタンガン使うなんて聞いて無かったのに、松谷くん、ナチュラルに使うんだから」

「えー、だってー、この人筋肉馬鹿だからさー、返り討ちにされそうで。でも、高橋さんがダメって言いそうだったからー」
 
「当たり前でしょ?スタンガンなんて使ったら、感覚麻痺しそうじゃない。散々痛めつけないと、私の恨みは晴れない」

あなただってそうでしょ?と、『松谷くん』と呼ばれた男に問う。

そりゃそうですよ、という返しは、まるで台本があったかのように違和感無く俺の心に沁みた。

……どうした、どうなっているんだ。

俺は、監禁されるのか?

それとも、俺は……これから。

その先に続く言葉を容易に想像でき、身震いする。

それに、真奈は……?

自然と眉間に力が入った。

「あれー?何か言いたげだね。言わせてあげる」

ゆっくりと、『松谷くん』が俺の口を塞いでいたガムテープを剥がした。

口周りが涼しく、少し粘着が残った。

「……どういうことだ。俺を監禁するつもりか?そして、真奈はどうした」

なるべく低く、威圧感のある声をつくった。

「そーんな喋り方しても、僕達は怖がらないよ?だって、君はもう1人。残念だったね」

……君はもう1人、だと?

「俺には真奈がいる。死んだ美奈だって、俺の味方だ。俺は1人なんかじゃない」
 
きゃはははははっ!

突然、花奈が高笑いを始めた。

金切り声が、化け物のようで。

しばらく、見つめていることしかできなかった。

「馬鹿じゃないの?ずっとあなたは1人。昔も、今も、これからも」

つんざくような高い声が震えを加速させた。

「あら、私の言っている意味がよくわかっていないようね」

「松谷くん?説明書して差し上げて」

「いいんですか?こんないいところ、僕が頂いても」

「私にはもう一つ武器があるもの」

「それもそうですね」

会話の間貼り付いていた邪悪な笑みが汗を増やした。

嫌な予感に胸が粟立つ。






「真奈さんは……僕が殺したよ」