「やっぱりああいう人なら、みんなに胸張って紹介できるよね…」
言ってしまえば彼女は私と同じ立場だ。
親が組長で、その一人娘。
きっと小さい頃から文武両道に育てられてきて、だからこそあんなにも芯が通っていて強くて。
それに比べ私は物心つく前から16歳まで施設で育って、こういう世界を知らずに生きて。
やっと天鬼の人間なのだと実感が湧いてきたレベル。
「まーったく仕方ないなぁ。とりあえず平日は毎日稽古つけてあげるよ」
「えっ、ほんとに!?」
「まぁ腕っぷし以上に心が鍛えられると思うし。…絃ちゃんにはたくさん借りがあるから」
やっぱりこの男と友達になった私は間違っていなかった。
というより、友達とは気づいたらなっているもの。
心も身体も強くなって、お料理だって家事だって難なくこなせるようになって。
その上で私がちゃんと1人で立てるようになって。
そうすればきっと、みんなに認めてもらえるはずだ。
「じゃあまずは体力づくりから。走り込み、行ける?」
「押忍っ!!」
「あ、そうだ絃ちゃん」
走りかけた陽太はピタッと止まった。
その反動でうしろを追いかけた私は、おもいっきりそいつの背中に鼻をぶつける。
「うぶっ!!」と、反応したとしてもお構い無し。
「親友の絃ちゃんだけには言っておこうと思って」
え、なんですかその顔。
あんたそんな顔もできたの。
すっごい顔赤いし、なんか照れてるし、ちょっとだけ挙動不審だし…。
「俺……好きな子ができちゃったみたい」
そう言った陽太は、今まで見た中で一番に年相応な顔をしてはにかんだ───。



