「うん」と答えれば、髪を撫でてくれるものだから。

ほんとは正直もうそれどころではない。


いま何時?みんなどこ?
昨日はあれからどうなったの?とか。



「…ん、うめえな」


「うんっ」



ホテルマンさんに頼んだら、10分もしないうちにバニラアイスが運ばれてきた。

それはいつも食べてた市販のものではなくて、ここのシェフが作ったというこれまたお高そうなもの。


だけどそんなものを1つだけ頼んでと、私の願い。



「赤ちゃん返りか?」


「ちっ、ちがうよっ!」



そうとられてもおかしくないけど…。

甘えたくなった。

なんかよく分からないけど、甘えたくなったのだ。


お皿に乗ったアイスクリームをスプーンですくう絃織、口を半開きにさせて待っている私。

冷たくて甘くて、でも市販のカップアイスのほうが好きかも…なんて。



「確かにもう赤ん坊じゃねえな、ガキでもない。…まぁ俺がそうさせたんだが」


「……」



うん、赤ちゃんじゃない。
もう18歳だもん。

ガキじゃないよその通りだ。


俺がそうさせた……?
そうさせたって、なにをさせた…?



「な?」



ずいっと顔を近づけて、悪戯な笑みが再確認してくる。



「なっ…!」



やっと意味が分かると、ボンッと音が出たんじゃないかってくらいに真っ赤な顔が目の前の瞳に映ってて。

あう、おう、なんて言葉にならない反応しかできない…。



「わっ…!んっ、もうっ…!アイス…っ」


「…やっぱこっちのが甘ぇ」



手にしていたお皿とスプーンはベッドサイドテーブルにカチャッと置かれて。

後頭部を引き寄せられながらも、ゆっくり倒される。

そして首元にかかっている私と同じネックレス。



「昨日いっぱいしたのに…っ、」


「余裕で足りねえよ。猿ナメんな」


「もはや自虐を逆手にとってる…!!」



そんなすべてが、

とろけるように甘い───。