「…天鬼に婿入りしようかな」
「えっ!お婿さんなるの…!?」
「…それぐらいヘタレだってことだよ、俺が」
うん、那岐はすっごいヘタレだ。
いつもいつも格好つけてるけど本当はいつだって嫌われてしまうことに、大切なものを傷つけてしまうことに怯えてる。
それがすべて自分の責任だって思って、ぜんぶ抱えようとして。
「…でも、」
「っ、」
ぎゅうっと、強く強く抱きしめてきた。
その腕は震えている。
吐いた息もか細くて弱々しい。
「お前には、“那岐”を…一緒に背負ってほしい」
その声も震えていた。
“那岐”と名乗れば私たちが身を置く世界では怯えられる。
馬鹿にされて、小馬鹿にしたように鼻で嗤われる。
大罪人と、言われる。
「俺は“那岐”を、…守りたい。そのためには絃の光が必要なんだ」
「…うん。私たちが一緒なら…なにも怖くないよ」
かつて、この人の父親は那岐組を、那岐の親族をすべて滅ぼそうとした。
女も子供もみんなを殺して、自分をも命を絶って。
そんな“那岐”を息子であるこの人は守ろうとしている。
哀しみに暮れるその名前に、再び光を当てようとしているのだ。
「…ってなわけで、いいか」
「え…?」
……空気がまた甘いものに変わろうとしている。
いいって……なにが…?
「散々言ってくれたからな。…今度は俺が啼かせてやる」
「えっ…、わっ、ん…っ!?」
ちゅっと、柔らかい唇が重なって。
指は絡め取られて繋がれて。
タオル1枚の人が上に覆い被さって、私のバスローブは今にもはだけてしまいそうで。



