私が就職をしようとしてるのも、空手を習ったのもお料理教室に通ってるのも。
そんなの天鬼のためなんかじゃない。
千春さんのようになりたいからじゃない。
それは“那岐”を一緒に背負いたいからだ。
物理的な攻撃からも周りの目からも、そんなものから今度は私だってあなたを守れるようになりたいからだ。
もう抱っこされて泣いてるだけの赤ちゃんじゃない。
「私だって本当は今も昔も…っ、那岐のお嫁さんになりたいって、思ってる……!!」
赤ちゃんの頃だって何よりも大好きな人だった。
微かにしか覚えてなかった夢のような記憶は、またあなたに再会してどんどん甦って。
『いつか、───…俺のお嫁さんにしてあげる。…なんて』
そう、言ってくれていたような気がする。
わからないけど、そんな気がする。
その声が今もふとたまに聞こえてくるときがある。
思い出の中で、聞こえてくる。
「それなのにいつもいつも保険かけやがって馬鹿野郎…」
あ、内なる絃さんようこそ。
“なんて”とか“的な”とか“私を尊重する”とか。
そんな言い方して逃げてるのはどっちだって話だ。
「まだ昔の那岐のほうがずっとずっと格好良かったよ……!!」
絶対に守るって断言してくれた。
俺がいるよって、そこで止めてくれた。
「…ふっ、…ははっ、」
私ばかりがぶつけちゃったことには申し訳なさがあったけど、黙ってたのはそっちだ。
静かだからちょうどいいってマシンガンにぶつけ終わると、ようやく笑い出した。
「……なにも言い返せねえ…、」
ポスッと首筋に顔を埋めてきた。
それは甘えるかのように、ぎゅっと腕の中に包み込んでくる。



