あの時間を、あの瞬間をきっと誰よりも楽しみにしていたのは私。
だって私言ったもん、前に。
“那岐”と関わる度にいつも期待してたって。
「あの日、着てたのっ…!紐になってて、スリットになってて……なんかすっごいやつしてて…っ、」
でもコンビニに走って向かって走って戻って、本当にもう散々で。
あー何やってんだろって思って。
「でもアイス食べてたじゃん…っ!千春さんとアイスっ、…昔から“なぎ”とアイス食べるの私って決まってるのに…!」
そんな決まりはない。
そんなものは決まってない、知ってる。
「なんで食べちゃうの!!なんで倒れるのっ、なんで熱出すの、
なんで…千春さんをマンションに入れるの…!!そんなに私は頼りない…!?」
だから頑張って頑張って、お料理も空手も就職もぜんぶ絃織を頼らず1人でやろうって。
私最近、いろんな人に鼻で笑われちゃうんだよ。
千春さんにも、面接官にも、同じ面接を受けた人たちにも。
“天鬼”って肩書きが無かったら本当に何もない人間なんだよ。
「いつもいつも格好つけて…そんなのばっかりしてたら…っ、
私は“那岐”の前ではずっとずっと一生女の子の日終わらないから……!!」
絃織じゃないもん。
それ、“那岐”だもん。
いつも1人でぜんぶ抱えてしまう“那岐”だ。
なにも話してくれない、それなのに私を守ろうとしてくれる那岐だ。
でも結婚ってそんなのじゃない。
どちらかが頑張る話じゃない。
一緒に頑張るんじゃないの…?
「それを…こっんのバカは……!!」
私はあの日、那岐よりもずっとずっと期待してた。



