幼少期に自然界の楽しさに目覚め、メダカを育てているうちに餌になるミジンコに興味を持ったという。

小学五年生の時には「全国自由研究コンクール」でミジンコについて発表し受賞。

中高一貫の超難関男子校に進学し、中三の時にも「ジュニアサイエンスコンクール」で受賞。

国内トップクラスを誇る進学校にいながら、なぜかこの二流大学に進学してきた。
なぜならミジンコ界で尊敬する教授がいるから。

そう、彼はこの25年間、ミジンコ以外に興味を持ったことがないのだ。


一方、私はと言うと、ごくごく普通の家庭に生まれ育ち、中学校で淡い恋などもしながら猛勉強の末に県内トップの進学校に入学。

三年間、理系クラスに属し、頭のいい男子たちに後れを取らないよう必死に勉強ばかりしてきた。

偏差値から妥当なラインで大学を決め、無事合格。

しかし授業の難しさに半ばついていけず、大学4年の時の研究室の選択で、友達の優那(ゆうな)と同じ再生医療系の研究室を希望したけど私だけ落ちた。
第二希望も落ちて、空き枠のあったミジンコの研究室に。

そこで、出会った同級生の理仁に一目ぼれをするも、全く進展もなく。

理仁が博士課程に進むと聞いて、大きな目的もなく私も残ってしまった。

こうして今に至る。

研究室に入り浸る毎日。
ミジンコには未だに興味が沸かない。
けど、孵化する時は、少し嬉しい。

そして気付けば私も25歳。

まともな恋をしたことがない。