はっきり言って、桐生が倒れたことにかなりビビってるし、すごく心配だ。ものすごく心配だ。この後、サッカーなんてやる気分じゃない。本当なら、そばで起きるまで見守っていたい。

でも、勝たないと今まで頑張ってきた意味がなくなる。それに、桐生が倒れてまで応援してくれたのは、俺たちに勝ってほしかったからだ。そのためにも全力で頑張る。

やる気に満ちたまなざしで俺は、後半戦へ挑んだ。


「やったー!」


俺たちは力の限り叫んだ。

後半戦、あの後どちらの高校も、一点も入れることができずに終わった。
だが、朝日高校は前半戦の俺のキックで一点入れている。

試合結果は、1対0で、俺たちは勝つことができた。


そのあと、俺はマッハの速さで着替えて保健室へ向かった(優斗と蒼は片づけを手伝ってくれているらしい)。

もちろん、桐生に会いに行くためだ。ただ、あれから付き添いで、桐生の友達二人が近くにいるらしい。
それでも、顔を一目見に行きたかった。もう目を覚ましたか知りたかったのと、試合に勝ったことを報告したかったからだ。



ーガラガラ


「失礼します。」


そう言って、保健室に入る。
山田先生は、職員室にいるのか、不在だった。

桐生の友達二人も、今は外で片づけを手伝っているみたいだ(その二人もサッカー部のマネージャーなので)。

そっと、ベッドのカーテンを開ける。


「かわいい、、。」


桐生の寝顔を見たとき、思わず口からそんな言葉が出ていた。


熱が下がったのか、顔はもう、赤くなかった。


「試合、勝ったよ。」


目的の一つである、報告をする。

なんとなくまだそばにいたくて、近くの椅子に座って俺は一年前のことを思い出した。




あれは、まだ俺たちが高一になったばかりの入学式の日だった。

1番初めに話しかける勇気が出ないのか、女子はみんな俺をチラチラ見ながら話しているだけで、誰も声はかけてくれなかったし、俺自身も誰かと仲良くなろうとは思っていなかった。中学のころからの仲の蒼も優斗も、別のクラスなので話す人はいない。みんなが色んな子と話して仲良くなっていく中で、一人俺だけ浮いているようだった。
そんな中、隣の席だった子が、


「おはよう!」


と明るく声をかけてくれた。ニコニコ笑顔で。少し驚いた後、俺も


「おはよう。」


と声をかけると明るく笑って、


「よろしくね!」


と言ってくれた。

それを機に色んな子が俺に話しかけてくれるようになった。その時から女子に囲まれ始めたので、その子とはそれっきり大した話はできなかった。