「ほんっと、私も始め聞いたときは驚いたし、阻止しようとしたんだけど、聞かなくって。」


あきれたように朱里が言った。


「女子全員に友チョコって。」


華が言った。


「おまけにね、手伝おうか?って聞いても、自分が渡す分は自分で作るとか言い出して、私たちが家に帰った後も、ずーぅっと一人でやってたらしいのよ。こういうとこ、やりだすと止まんないのよね~。」


さっきは私たち女子三人が驚いたけど、今度は、男子三人が驚く番だった。


「すごいね、、、陽。」

「そう?」


去年はクッキーだったけど、今年はふつうのチョコだったから、かかった時間は同じくらいだったんだけど。ま、冷蔵庫の中がどえらいことになっていたけどね。

三人はしばらく、あっけにとられてたみたいだった。
教室について、私はクラス全員のところに回って、チョコを一人一人配っていった。


「どうぞ。」

「ありがとう、陽ちゃん。私も、はい。」


そう言って、私が友チョコを渡すと、返ってくることが多かった。
昨日は大変だったけど、みんなが笑ってありがとうって言ってくれると、がんばってよかった、と思える。

ちなみに男子三人は、引き出しをガタッ、と開けた時も中からチョコレートが出てきていた。それだけじゃなくて、直接三人に渡す人も多かったけど。だから、帰りは持って帰るのが大変だったみたい。

しゅうくんは、今朝言った通り、全員にチョコをごめんなさいって返していたらしくて、帰りは私たちからのチョコが入った、小さな紙袋一つしかもっていなかった。


それから、学校が終わり、私は家に帰ってきた。

家の机の上には、あと一つだけ包装されたチョコが残っている。涼風くん用のチョコだ。この後、塾があるから、そこで渡そうと思っている。

しゅうくんの気持ちを考えて、今年は男子に友チョコを配るのをやめた。でも、涼風くんくらいは渡してもいいかなーって思って。






「いってきまーす。」


それから、一時間後。私はそう言いながら家を出た。


ーふんふふん♪


私が鼻歌を歌いながら歩いていると、前に涼風くんを見つけた。


「おーい!!」

「あ、陽ちゃん。」


涼風くんが気付いて振り返ってくれた。私は、たーっと走って行って、涼風くんに追いつく。


「これ、友チョコ。最近仲良くなれたから。」


ガサゴソと、バックの中から取り出して、私は渡した。


「ありがとう。大事に食べるね。」


涼風くんはそう言ってくれた。

みんな喜んでくれたし、楽しいバレンタインになったな~。