「忘れたのか、下駄箱は、そーっと開けないとだめだぞ。」

「気をつけろよ。」


佐伯くんと一ノ瀬くんは、特に驚くことなくそう言いながら、散らばったチョコを拾うのを手伝っていた。


「でっかい紙袋誰かが入れてくれたみたいだから、それに入れれば。」

「だな。」


しゅうくんが返事をした。

そんな会話をした後、一ノ瀬くんと佐伯くんもそれぞれの下駄箱をそーっと開けた。そして一番端っこの何かを引っ張った。


「今年は、俺んとこにも紙袋入ってたわ。」


一ノ瀬くんがそう言いながら、紙袋を広げた。それからそこに、大量のチョコを詰めいていった。


「いいな、俺なかったからちっちゃい紙袋に入れてくれた子のところにまとめるしかないや。」


佐伯くんがそう言って、一個ずつチョコを腕に抱えだした。


「三人とも毎年こうなの?」


やっと、驚きから覚めた朱里が聞いた。


「そうだよ。だから朝はちょっと早めに来ないとなんだ。他に下駄箱使う人の邪魔になるからさ。」


三人は、平然として、チョコをまとめていた。


「ま、すっごく嬉しいけど、あんまり多いと一人じゃ食べきれないっていうくらいの時もあるから、大変なんだ。でも、せっかくもらったんだから、一人で全部、食べてるけど。」


しゅうくんがそう言った。それからハッ、とした様子で、


「三人からのは、すっごくうれしかったから、何が何でも食べるから。誰が何と言おうと食べるから!絶対に残さない!」


と、言った。


「うん、嬉しい。」


私が素直にそう言った。


「俺もだから。」

「俺も!ぜってー食べる!!」


一ノ瀬くんと佐伯くんもそう言った。

、、、でも、しゅうくんって他の女の子からのチョコも食べてるんだ、、、。
きっと今年もそうだよね。


「、、、でも、、今回は気持ちを受け取れないから、みんなに返してこようかな。」

「えっ、、!?」


思わず言葉が出た。


「かわいいかわいー彼女ができたのに、前みたいにパクパク食べられないや。」

「でも、、それはさすがに申し訳ないんじゃない?」


私が聞く。
本音は、受け取ってほしくなかったけど、そんなに重いカノジョになりたくない。


「これは俺が勝手にすることだから気にしなくていいよ。」


しゅうくんはそう言ってくれた。


「こいつの愛、想像してる以上にでかいから、想いカノジョになりたくないとか考えなくていいと思うけど。」


横から一ノ瀬くんがそう言ってくれた。
、、、じゃあ、そうしてもらおうかな。

それから私たちも手伝って、何とかチョコを袋に詰めた。佐伯くんのは、みんなで協力して、ちっちゃい紙袋いくつかに入れていった(押し込んでいった?)。

そのまま、六人で教室に向かう。

一ノ瀬くんとしゅうくんは、おっきい紙袋に、沢山チョコが入っていたから、男子は、いいなぁという風に見ていた。

佐伯くんは、小さい紙袋をたくさん持って、その中にもチョコがきゅうきゅうに詰められていたから、これまた男子がうらやましそうに見ていた。


「そういえば、不思議に思ったんだけど、桐生のでかい袋に入ってる、大量のチョコって何?」


一ノ瀬くんが、不思議そうに聞いた。


「あ、これ?クラス全員に配る用の友チョコだよ。」

「!?」


三人とも、私より前に歩いていたんだけど、同時に振り返った。


「え、全員?」

「うん、全員。どうかした?」


目をパチパチさせながら私は聞いた。