そう考えたら、押し寄せていた感情がふっと消えて、”幸せ”だけが残った。
そんなわけで、無事にいつもの”如月 柊樹”に、戻れた俺。さっきはビックリしたが、冷静に考えれば大丈夫だ。
心の中が色んな感情でごっちゃ混ぜになってたけど、整理できた気がする。

それから俺たちは昼ご飯を食べ終えて、デパートを出た。今度は三人で家まで帰る。
すると、唐突に涼風が言った。


「そういえばさっき、話しかえられちゃいましたけど、二人ってとても仲が良いみたいで少しうらやましいな。」


へへん、そうだろ。


「そんなに彼氏さんがかっこよかったら、僕に勝ち目はないか。」


、、、!?なにいってんだこいつ!からかい気味に言っているが、コレは明らかに、本音だ!涼風、絶対に陽に気があるだろ!!


「ははっ、面白いね、涼風くん。」


そして、なぜ気づかないのだ、陽!!だまされるなぁーーー。
まあ、そんなこと言う俺も、ついこないだまでかなり、恋に鈍感だったらしいんだけど(あくまで自覚はなかったので、”らしい”だ)。付き合い始めたからなのか、前よりかは何となく、そういうのが分かるようになった気がする。

でも、こいつ、俺に対する目が笑ってない。まるで「いずれ奪いますから」とでも、言いたげな目だ。

こりゃ、やばいな、、、。そうだ!


「でも、陽は俺の彼女なので。」


ギュっと陽の手を握り、胸の前で、しっかり”彼氏”アピールを入れる。
だけどこのセリフ、自分で言っておきながらなんだけど、くっそ恥ずかしい!

第一に、陽って下の名前で呼んじゃったし、超キラキラ台詞だし、手つないじゃったし!!

俺は、顔が赤くなっているのがばれないように、ちょっと、横を向いた。


「やっと、名前呼んでくれた!」


陽から返ってきたのは、予想外の言葉だった。


「へ?」

「だから、下の名前で呼ぼうって決めた時から、一回もハッキリ呼んでくれてなかったじゃんって言ってるの。」


げげげ、バレていたんですか!?陽の言う通り、名前を呼ばなくちゃいけない時は、小さい声で言ったり、つんつんと、肩をつついたりして、気づいてもらってたんだけど、、、。何も言ってこなかったから、気づいてないと思ってたのに。