「ちょっと来て。」


如月くんにそう言われたのは、今さっきのことだった。
さっさと歩いていってしまったので、私も後を追う。

下駄箱に入って、ようやく止まった。


「ここなら見えないな。」


、、、?どういうことだろう。


「あのさ、えっと、あの、、」


なんでかわかんないけど凄い焦ってるなぁ。


「悩みとかあるなら聞くよ?」

「ありがと。でもそういうんじゃない。」


じゃあ、なんなんだろ。

如月くんが一度目をつぶって深呼吸した。


「桐生はまったく気づいていなかったみたいだけど、俺、、、実は1年のころから好きだったんだ。あー、お前のこと。」


一番最後の方なんて、すっごく小さかったし、ちょっと早口になっていたけど、私には十分だった。


「ごめんな、振られることは分かって、、、」


ーギュっ

気づいたら体が動いていて、私は如月くんに抱き着いていた。


「いきなりでちょっとびっくりしちゃったけど、私も、、大好きっ!」


恥ずかしかったけど私の心の中から、精一杯出した言葉だった。

如月くんが目を見張って私の方を見ている。


「夢だよね、、、。」


違うよ、と私が言ったら、如月くんが自分のほっぺたを思いっきりつねった。


「いっっった!」


そんなに本気でつねっちゃったんだ、、、。そんな無邪気なところも好きだなぁ。


「幸せすぎるっ!!」


そう言って、ギューッと如月くんが私のことを思いっきり抱きしめてくれた。


「、、、あれ、これってさくらのにおい?」

「そうだよ、俺、桜好きなんだ。」


あの時の桜のにおいの正体は如月くんだったんだね。

ふふっと、笑っていると誰かの足音が聞こえてきた。
ーたったったったっ


「あ、ヤベ、誰か来る。」


スっと如月くんが離れてしまった。ちょっと寂しい。


「でよーぜ、ここ。」

「うん。」


ニコニコと二人で並びながら、観客席に戻る。

きっと他の人から見たら、今まで通りの”学級委員”として並んでいる二人なだけだろう。でも、私たちの心の中は幸せでいっぱいだった。


「遅いよ、柊樹~。もっと早く帰って来いよな。」


佐伯くんが如月くんに話しかける。


「ごめん、ごめん。昼飯だろ、昼飯。」


ガサゴソと、如月くんがリュックの中からお弁当を取り出した。


「その様子だと、告白成功したってことでよろしい?」


一ノ瀬くんが聞く。


「そーだけど。」


小さい声で、如月くんがそう答えた。


「おめでとう!!」


一ノ瀬くんが思いっきり如月くんに飛びついた。いつもクールな一ノ瀬くんがこんなことをするなんてと、周りの目が一気にこちらに集まった。