いや、よく考えてみれば佐藤は俺らが、”カップル”であるかを聞いているだけだ。


「そうだ、俺らはそんなんじゃない。」


気づいたらそう答えていた。
我ながら情けない。早く告白をして、あきらめをつけたら、こんな気持ちもおさまるのだろうか。でも、こんなんじゃ当分無理だな。

プイっと、背中を向け、観客席へ戻る集団に紛れて戻る。


「よぅ、柊樹。お前1着で凄いな。」


横にいた優斗が話しかけてきた。気持ちが沈んだときは友だちといるのが一番元気になれる。


「おう、優斗。ありがと。とか言いながら、お前も第三レースで1着だったけどな。」

「バレたか。」


バレたってなんだよ、と俺は思った。


「さっきのちょっと聞こえちゃったんだけどさ、お前ホントにあんなのでいいの?告ってみなよ、すぐそこにいるんだからさ。」


優斗がそう言って、桐生の方を見た。俺は思わず黙ってしまった。


「行って来いよ。」


優斗が笑いながら、軽く肩でぶつかってきた。少しよろめいた俺は、思ったより近くにいた、桐生の真ん前にいた。


「どうしたの?」


また、目をパチパチさせながら桐生が聞いた。

げっ、なんて言おう、、、。


「お前の昼飯、つまみたいから早く戻って来いよ。頑張れ。」


横でこそっと優斗が言って、観客席の方へ行ってしまった。
 
俺はその言葉に押されるようにしていった。


「ちょっと来て。」