パチっ。
 
目が覚めた時、真っ先に見えたのは白い天井だった。
 
あれ?さっきまでサッカーの応援をしていたのに、、、。
 

「起きた―――!良かった〜。」


朱里の声が聞こえる。

横を見ると朱里が私の手を握っていた。
 
何があったんだろう?


「大丈夫?陽ちゃん、夢中になりすぎて、応援してるとき水飲むの忘れてたんだよ。そしたら、熱中症で倒れちゃって、如月くんがここまで陽ちゃんを連れてきてくれたの。」
 

華が心配そうな声で、そう説明してくれた。
 

「えっ。」


そんなことがあったなんて。全然覚えてない、、、。


そう言うと、二人ともとても驚いて、心配そうな顔をした。
 

「私、山田先生連れてくる!」


朱里がこの文を言い終わったときにはもう、廊下に出ていた。相変わらず行動が早いな。
 
少しして私は、


「さっきだれかここにいなかった?」


と、華に聞いた。
 
さっき、ほんの一瞬だけ、夏なのに桜のいい香りがした気がしたのを思い出したのだ。朱里や華は、桜の匂いの制汗剤とか香水を使わないからちがう。
 

「試合のあと如月くんがちょっと寄ってくれたっぽいよ。心配してくれてたみたい。」

「そっか。」
 

華にそう言われて、あとで如月くんにお礼言わないとな、と思った。私をここまで運んでくれたみたいだし、さっき寄ってくれたらしいし。
 
でも、如月くんは桜の匂いの正体とは違いそうだな。そういう匂いとかのは使わなそう、、、私の偏見だけど。
 
それから私は、はっと思い出したように聞いた。


「試合、勝った?」

「うん、勝ったよ。」


満面の笑みで華が言う。あ~、良かった。あれだけ頑張って練習したんだもんね。
 
ここで、朱里が戻ってきた。


「ごめんね。いま職員室にいたの。」


そう言いながら山田先生が熱を測ってくれた。
 
見せてもらうと、完全に熱は下がっていた。


「これなら大丈夫ね。もういいわよ。」
 

ありがとうございました、とお礼を言って保健室を出る。

もう、特にやることもなかったので家に帰ろうと、三人で下駄箱に向かっていたら、前から如月くんが歩いてきた。
 

「さっきありがとう、もう元気になったよ。」

「良かったな。じゃ、また月曜日。」


如月くんは、それだけ言ってスタスタと通り過ぎてしまった。
 
もう少し話したかったな、なぜかそう思っている自分がいた。