「おい地味ノ瀬」
え? い、今呼んだの、蛍くん?
地味ノ瀬って……わ、私のこと?
「……気をつけて」
え……?
ぼそりと、蛍くんが耳もとで囁いた。
きっと先に教室を出ようとしている陸くんには聞こえなかっただろうくらい小さな声で。
「また明日やな」
響くんが笑顔で手を振ってくれて、私も同じように返す。
「バ、バイバイ」
ふたりは、教室から出ていった。
今の蛍くんのセリフ……なんだったんだろう……。
“気をつけて”って……?
とりあえず、早く帰る支度しよう!
カバンを持って、陸くんを追うように教室を出た。
「編入初日はどうだった?」
生徒会室に向かいながら、陸くんがそう聞いてくる。
「あはは……まだわからないことが多いかな……」
「少し特殊な高校だと思うし、困ったことがあればなんでも言ってね」