それは……名前を認知していたくらい通いつめてくれていた、正道くんというファンの男の子のこと。

イベントや握手会に欠かさず通いつめてくれていたのに、最後の握手会に現れなかった。

最後のお別れができなかったことが……今もずっと気になっている。


正道くん、元気にしているかなぁ……。

なんて、気にしていても仕方ない。

最後の握手会に来てくれなかったってことは……単純に、私に飽きてしまったのかもしれないし……。

ファンが離れてしまうなんて、よくあることだ。

引退が決まったアイドルを応援するのはしんどいだろうし、正道くんもきっと……。

ずっと応援してくれていたから、そう思うと悲しいけど、今の私はアイドルではないんだ。

これからは普通の高校生として、学校に通うんだから。