心のダムは壊れてしまい、溢れ出した水は涙となって頬を伝う。


「もう、からかうのはやめてください!」
「姫野、」
「これ以上、私をっ、おかしくさせないで!」


 勢いに任せてそこまで言い、持っていた本を大路君に投げつけた。

 そう。大路君はいつも、私をおかしくさせる。
 大路君のせいで、表情も崩れる。心臓も落ち着くことを知らない。

 いつもいつも大路君は、私ばっかりおかしくさせて。


「大路君なんか……っ! 大嫌いです!」


 言うだけ言って、大路君の顔は一度も見ずにその場から走って逃げた。

 大嫌い、大嫌い。


(大路君なんか、)


 Q.この高鳴る胸の正体は?
 A.大嫌い。