「……っじ、くんは……」
「ん?」


 力任せに動いてみれば、拘束は案外簡単にほどけた。

 なぜか視界は歪んで見えて、心の中はスプーンでかき混ぜられたかのようにぐちゃぐちゃ。


「大路君は、どうして……!」


 一度言葉を落とせば、それに連なって次から次に溢れ出る。


「大路君はどうして、私にキスをしたんですか!? なんで、こんなことをするんですか!」


 わからないことばかりで……悔しい。