細く目を開けると、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいた。枕元では充電しっぱなしの携帯が、アラーム音を響かせている。

 見慣れた自宅の、自分のベッドの上だ。

「夢……?」

 覚めてみればなんて事はない。いきなり場面転換するのも、説明のつかない現象が起こるのも、夢の醍醐味だ。

 一体どこからが夢だったんだろう?

 私は額に手を当てて考える。

 テレビで砂嵐を見たのは、昨日の深夜だったと思うけど、もしかしたらアレも夢かもしれない。

【Welcome to the world of dreams.】

「夢の世界へようこそ、か……」

 砂嵐に浮かんだ英文を思い出し、ため息をつく。

 さっきから枕元で鳴り続けるスマホを持ち上げ、ようやく目覚ましを止める。

「っやっば!」

 液晶に浮かぶ9:20の数字を見て、慌てて飛び起きた。

 *

「ごめんねっ、(りょう)ちゃん!」

 待ち合わせ時刻である十時から二十分遅れで到着し、私、 水瀬(みなせ)(りん)は顔の前でパン、と柏手を打った。

「遅れるなら遅れるで、メッセくれれば良かったんだけど……」

「スマホも忘れたの!」

 彼は呆れた顔から一転、マジかよ、と呟き表情を固める。

 遅刻の上にうっかりスマホまで忘れた私は、どこまでもついてないと思う。