近すぎて、言葉を発したら唇まで触れてしまいそうで、透子は目を見開いたまま固まった。
自分の鼓動が体の外に漏れているかと思うほど大きく頭の中で大きく響き、頬まで熱くなる。
耐えきれず目をつむると、すっと肩が軽くなった。
「じゃあ帰る」
目をあけると龍道コーチはもう立ち上がっていた。
下まで送るという透子を止めて、玄関で透子と向き合った龍道コーチはちょっと考えてから「これくらいはいいよな」と、透子の体を引き寄せて軽く抱きしめた。
驚いて、どきりとして、それから心地よくて、透子はそのまま龍道コーチの腕の中で目を閉じた。
「おい」
ふいに体を離されて、透子はぼんやり顔を上げた。
「まさか俺に抱きしめられて立ち寝とかしてないよな」
「まさか」
慌てて否定する。
本当は意識がとびかけたとは言えない。
「そうか、じゃあお休み。あ、ちゃんと鍵かけろよ」
そう言って透子の頭をポンと叩くと、龍道コーチは玄関から出ていった。

