―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき

「労働の後のビールは最高ね」
「焼きそばも最高だ。麺の硬さが絶妙なんだよ」
「シュウマイの肉汁がすごい」
「エビは相変わらずぷりぷりだ」
などと陳さんの料理をほめたたえながら、2人が食事を終えたときには12時近くなっていた。
長い腕を後ろについて、満足げに体を反らした龍道コーチは「眠くなってきたから泊まろうかな」と透子を見た。

「え! だめよ」
「どうして?」
「どうして?って、そんな、ほら、尾行されているかもしれないんでしょ。初デートで男を泊める女なんて不埒じゃないの。私の印象がどんどん悪くなるじゃない」

勝手に龍道コーチに付きまとう女にされて、あげくすぐに家に上げて無理やり酔わせて泊めた、みたいな話にされたらたまったものではない。

「そうかなあ」とあくび交じりの声は今にも寝てしまいそうに間延びしている。
透子は焦って「早く帰ったほうがいいって」と龍道コーチの前にかがんで肩をゆすぶった。
小ぶりの頭が大げさにかくかく揺れて、さらっとした髪が額にかかる。
もしや寝たのかと、龍道コーチの顔を覗き込むと、龍道コーチは急に目覚めたように体を起こして、肩に乗った透子の手をつかんだ。

「じゃあ何回目のデートならいい?」

鼻先が触れるくらいの近さに顔が迫り、透子は思わず息を止めた。