―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき

10時まで皿洗いや接客を手伝って、店を出た。
帰り際に陳さんが「本当にありがとうね。新君にがっぽりバイト料もらってね」と言って、透子にだけズシリと重い白いポリ袋を持たせてくれた。
底に手を当てて受け取るとまだ温かく、空腹を刺激するよい匂いが漂った。

「だから言っただろう。陳さんが俺に気を遣うわけがないって」
「どうして?」
「俺の祖父さん、陳さんには若いころからものすごく世話になって、さらにはうちの親父も世話になっているから、うちは誰も陳さんに頭が上がらないんだよ。ガキの頃、家族で店に行って俺が騒ぐと行儀が悪いって親父も俺も叱られて、祖父さんはいつも陳さんに謝ってたし」

「へえー」龍道家に対してそれほどの威力をみせるとは、龍道コーチのお祖父さんは陳さんにいったいどれほどの恩があるのか興味深いが家族の話だ。
透子はあえてそれ以上はたずねなかった。

「それ、なに?」

龍道コーチが陳さんからもらった白い袋を指でつついた。