―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき

その後ろ姿に目を細め、「彼女、力持ちだしいいこだね」と陳さんが龍道コーチの肩をたたいた。

客商売をしているので人当たりはいいが、実は毒舌の陳さんが人を褒めるのは珍しい。
大学生の時に一度だけ同じゼミの子を連れていったことがあるが、酢豚やチャーシューの脂身を箸でちぎって皿の端に残す様子を見ると、「きれいな服きてるけど食べ方汚いね。ブスが余計ブスに見えるよ」と、陳さんは眉をひそめた。
その陳さんが透子をほめている。

「うん、いい人だよ」

皿を洗う手を止めずに龍道コーチはうんうんと首を振った。

「新ちゃんと一緒。気は優しくて力持ち」

気は優しくて力持ち――桃太郎の歌のフレーズだ。
男の褒め言葉で女性にはどうなんだろうか。
客席の間でブルーのプリーツが元気に揺れていた。