―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき

レッスンの内容は昼のクラスと変わらず、球出しによるストローク、ボレーの練習のあとに生徒同士のラリー、コーチとマンツーマンのストロークといった練習が行われた。
泉コーチとのラリー練習は普段のクラスで慣れているし、龍道コーチとは違って怒鳴られることもないので気が楽だった。
最後にちょいちょいと呼ばれて泉コーチの方に近づいていく。
ネットを挟んで「もう少し下から上に振り上げて、あとちゃんと腰を回してね」と優しくアドバイスしてもらい、「でもうまくなったね」と、やはり龍道コーチからは言われたことのない褒め言葉をもらって、透子は思わず笑みがこぼれた。
子供も女も褒めて育てるべし、だ。

「でさ」と、泉コーチが声を落として顔を近づけてくる。

「ラーメン好き?」

話が急に飛んだ。

「好き、ですけど」

「じゃあ食べて帰ろう」

「え?」

「終わったらこのビルの裏側にあるローソンの前にいて」

なにも答えないうちに「はい、ローテーション!」と叫んで、泉コーチが次の生徒を呼んだので、透子は小走りで次の場所についた。
人の返事を聞かずに話を進めるところは龍道コーチと変わらない。