―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき

「よくわからないけど龍道コーチの指示らしい」

田淵は口に突っ込んだばかりのローストビーフの咀嚼をとめ、そのままごくりと飲み込んだ。

「どうして?」
「うーん、だからよくわからないけど昔コーチを助けたお礼とか? この間お礼なんていらないって断ったら、恩は返しておきたい質なんだっていばっていたから」
「ふうん、わざわざ服まで用意して自社主催のパーティのビュッフェに招待って、贅沢なようでせこいようで微妙だな」

確かに。

「きっと気まぐれで大した意味はないからこの際、食べて飲んで帰ろうよ」

透子は通りかかったウエイターから白ワインのグラスを2つもらって、ひとつを田淵の前に置いた。口をつけるとひんやりとしたピーチのような果実の味が口に広がった。