―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき

「えー! 田淵君、どうしてわかったの? あれ? でも苗字違うよね。マヤは旧姓?」
「だってマヤさんと龍道コーチってよく似てるじゃん。まさか兄妹? って思っていたらまさかだったんだ。マヤは下の名前でしょ。だけどどうして龍道家の令嬢なのに受付けで働いているの?」
「いろいろあるのよ」

それから透子と田淵はマヤさんに言われるままタクシーに乗り込み、龍道グループ主催の異業種交流パーティなどという、よくわからないパーティによくわからないまま連れていかれた。

荷物は置いていってもいいと言われたが、後でまた戻ってくるのも面倒なのでもっていってフロントに預けておくことにした。

キャパ500人程度の会場はすでに多くの人でにぎわっていた。

ビュッフェスタイルの立食形式なので皆、皿やグラスを持ちながら和やかに談笑している。
すでに顔なじみのメンバーが多いのか、せかせか名刺交換をしている人も見当たらず、堅苦しい雰囲気もなく透子はほっとした。

服装も女性はフォーマルだったが、男性は田淵のようにジャケットの下はTシャツやポロシャツ、チノパンなどラフな服装の人も多かった。
その一人に何気なく視線を向けると、麻のジャケットに白いTシャツ、ジーンズにスニーカー姿のいずみコーチだった。
やはりいずみコーチに気づいたマヤさんは「じゃあ適当に食べて飲んでて」と言い残し、いずみコーチと一緒に会場の舞台側に歩いて行った。

そこには50代くらいの男性と並んで話している龍道コーチがいて、透子は2人が合流するまで何気なく見届けた。

ワンピースまで用意され、パーティに呼ばれた理由はわからないが、お腹が空いたし喉も乾いた。
テニスのレッスンが終わってから何も口にしていない。
透子は田淵と一緒に単純に食べて飲んで帰ることに決めて、ビュッフェに向かった。
ローストビーフ、スモークサーモン、エビチリ、小籠包などを目が欲しがるままに節操なく皿に盛り、空いている丸テーブルを見つけて落ち着くと、テーブルにあった瓶ビールをグラスについで、2人とも一気に飲み干した。

「あー美味しい」

基本ビールはいつ飲んでも美味しいが、体を動かし、人に振り回されて、一息ついたときのおいしさはまた格別だ。
田淵は2杯目のビールをまた半分ほど一気に飲んだ。

「で、結局どうしてマヤさんはこのパーティに透子さんを誘ったの?」