―17段目の恋― あのときの君とまさかの恋に落ちるとき

ダッシュで着替えたが5分遅れた。
準備体操の途中でコートに入り、ちょうど端にいた田淵の隣に並んだ。

「遅かったね」

振り上げる田淵の長い腕にぶつかりそうになったので少し離れる。

「マヤさんと話しすぎちゃった」という答えはスルーして、田淵は「しかしここ、本当に人数多いね」と、屈伸しながら透子に顔を向けた。

「だから言ったじゃない」
「まあ、龍道コーチといずみコーチの最強タッグじゃ無理ないか」
「そうか、だから田淵君もわざわざこのクラスを受けたのね」

龍道コーチのサブにいずみコーチがつくのはこの初級クラスしかないはずだ。

「そこ、話さない!」

龍道コーチに注意されるが、田淵は臆することなく「すみませーん」と笑顔で朗らかに謝った。
これが透子だったら周囲から冷たい視線を浴びるところだが、場が和むような好意的なクスクス笑いさえおきている。
ひどい差だ。

龍道コーチとまではいかないが、田淵も会社で他部署の女子からも「カッコいい男がいる」と囁かれるだけのことはある。
ドラゴンウエイの生徒のなかでは史上最高レベルかもしれない。

鍛えた体にスポーツウエアが似合う。
知らない人が見たら田淵もドラゴンウエイのコーチに見えるに違いない。
ぴったり体のラインをなぞるTシャツが、カミングアウトされた透子にはゲイっぽさを強調しているようにも見えるが、他の人にはそんなことはわからない。