ぽっこぽっこ。
馬の足音がのどかに響く。
到着したのは緑に囲まれた乗馬倶楽部だった。
透子は乗馬だけでなく、馬を間近に見るのも初めてだった。
引き締まった体を包む艶やかな栗色の被毛、理知的で穏やかな黒い瞳。
「きれいね」
うっとりする透子の様子を感じ取ったのか、馬が少し首をそらした。
透子と龍道コーチは倶楽部内の馬場で軽く騎乗の仕方を教わったあと、インストラクターの馬について森林の中を散策していく。
馬はとても賢く慣れていて、透子が何もしなくて前のインストラクターの馬に歩調を合わせてゆっくりついていく。
林の中から風がさあっと抜けて肌を撫でていき、森の匂いを散らしていった。
乗馬でのトレッキング終えて倶楽部のフロントに戻り、透子が「本当にすごく楽しかった」と興奮気味に伝えると、龍道コーチは「また来よう」とにっこり笑った。
透子は“また”という言葉に反応し、期待する。
でも約束の期間を考えると“また”ここにくることはないだろう。
そう自分に言い聞かせてから「うん」と笑い返した。
途中サービスチェンジで軽食を取り、都心に戻って夕方から洋画を観に行った。
透子が公開前から気になっていたアメリカ映画だ。
コメディタッチのヒューマンドラマは派手な展開はなかったけれど、最後に胸がじんとする、「いい映画だったね」と素直に言える映画だった。
館内のライトがつくと龍道コーチはうるんだ目を隠すように急ぎ足で出口に向かっていった。
劇場を出るとすっかり日が落ちていて、薄暮れのなか龍道コーチは透子の手をつなぎ、「これからこの映画のタイトルを見るたびに今日を思い出すな」と、その手を宙に振りあげた。
馬の足音がのどかに響く。
到着したのは緑に囲まれた乗馬倶楽部だった。
透子は乗馬だけでなく、馬を間近に見るのも初めてだった。
引き締まった体を包む艶やかな栗色の被毛、理知的で穏やかな黒い瞳。
「きれいね」
うっとりする透子の様子を感じ取ったのか、馬が少し首をそらした。
透子と龍道コーチは倶楽部内の馬場で軽く騎乗の仕方を教わったあと、インストラクターの馬について森林の中を散策していく。
馬はとても賢く慣れていて、透子が何もしなくて前のインストラクターの馬に歩調を合わせてゆっくりついていく。
林の中から風がさあっと抜けて肌を撫でていき、森の匂いを散らしていった。
乗馬でのトレッキング終えて倶楽部のフロントに戻り、透子が「本当にすごく楽しかった」と興奮気味に伝えると、龍道コーチは「また来よう」とにっこり笑った。
透子は“また”という言葉に反応し、期待する。
でも約束の期間を考えると“また”ここにくることはないだろう。
そう自分に言い聞かせてから「うん」と笑い返した。
途中サービスチェンジで軽食を取り、都心に戻って夕方から洋画を観に行った。
透子が公開前から気になっていたアメリカ映画だ。
コメディタッチのヒューマンドラマは派手な展開はなかったけれど、最後に胸がじんとする、「いい映画だったね」と素直に言える映画だった。
館内のライトがつくと龍道コーチはうるんだ目を隠すように急ぎ足で出口に向かっていった。
劇場を出るとすっかり日が落ちていて、薄暮れのなか龍道コーチは透子の手をつなぎ、「これからこの映画のタイトルを見るたびに今日を思い出すな」と、その手を宙に振りあげた。

