成瀬君のファーストインプレッションが抜群に良かった事。
 お嬢様然とした、白鳥さんの『圧と後押し』
 お母さんの『絶妙なフォロー』
 再び、きりっとカッコ良かった成瀬君の『キメ告白』
 お父さんは、私と成瀬君の交際をなんとか認めてくれた。

 これで堂々と、私は成瀬君と交際出来る!

 成瀬君の誠実さ、お母さんの協力は勿論だが……
 親友になってくれた白鳥さんの応援と心づくしに深く深く感謝したい。

 なぜなら、成瀬君に恋していた白鳥さんの気持ちを考えると………
 もしも私が彼女だったら、親友として切り替える事が出来るだろうか?
 答えは、(いな)
 私はショックで、気持ちが荒み、とても切なくなる。
 平常心でいられなくなるに違いない。

 だから、何でもいい。
 「私ごときが、おこがましい」と言われるかもしれない。

 白鳥さんに何とか『恩返し』したい。
 せめて尽くしたいと思うのである。

 そんなある日、教室で私は白鳥さんから誘われた。
 最近は屋上ランチの事もあり、私と白鳥さんはとても近しい間柄だとクラスの皆に思われている。

「ゆい、ちょっと」

「ええっと、何?」

「ゆいのおうちへ2度も行ったじゃない? だから今度は私の家へ来てくれる?」

「う、うん」

「この前、約束したよね? 週末の土曜日とか、都合はどう?」

「だ、大丈夫だけど……」

「じゃあ来て!」

「う、うん」

「やった! ウチのママがね。ゆいにすごく会いたがっているの。とても感謝してるって」

「え? 感謝?」

 白鳥さんのお母さんが私へ感謝?
 どういう意味なんだろう?

 あ、そうだ。
 念の為、聞こう。
 成瀬君も誘うのかと。

 しかし、結局……
 私は成瀬君の事を聞こうとしてやめた。

 もしも成瀬君も一緒にというのなら、最初から白鳥さんが告げてくるはずだから。
 つらつら考える私へ、白鳥さんは言う。

「ウチの運転手の田中さん……知ってるよね?」

「え、ええ」

「土曜日の朝10時に、ゆいの家へ迎えに行かせるから」

「え? 迎えに? それって? いいよ、電車で行くから」

「いいの、いいの。ママがそうするようにって、言ったから。もう決定!」

「わ、分かった」

 こうして……
 今度は私が、白鳥さんの家へ招かれる事となったのである。