『サンドイッチ祭り』は前回に引き続き、大好評のうちに終わった。

 ハムカツサンドは、私、白鳥さん、お母さんに続き、お父さんの大好物となった。
 これで全員が、成瀬君の言う『ハムカツマニア協会の正会員』である。

 食後のお茶を飲みながら、お父さんの担当は白鳥さんから成瀬君へバトンタッチ。
 お母さんから提供した情報通り、お父さんの趣味である『釣り』の話で盛り上がっている。

「お父さん、俺、ウチのオヤジとよく釣りに行きました。アジのサビキ釣りとか、ガキの頃は楽しみでした」

「おお、アジ釣りか! 外道のサバが釣れると走るから、すぐあげないと、隣の人とお祭りするんだよな」

「はい、そうっすね」

 サビキ釣り?
 外道?
 走る?
 お祭り?

 私には『釣り用語』が全く分からない。
 ここでお母さんが言う。

「ねぇ、お父さん、成瀬君、気に入った?」

「おお、気に入ったよ。カッコいいし、スポーツマンだっていうし、学校の成績も良くて博学。その上、釣りも好きと来てる。真面目で気さくな性格だし、お母さんの言う通り、最高の男子だな」

 お父さん、成瀬君の事をほめちぎる。
 対して、お母さんは、悪戯っぽく笑う。

「うふふ、お父さんったら、成瀬君の事、気に入るどころか、大絶賛してるじゃない?」

「おお、そうだ、うん!」

 お父さんが同意すると、さあ、いよいよ作戦の終盤、対お父さん、最終決戦だ。

 打合せ通り、お母さんは「しれっ」と言う。

「じゃあ! ゆいの彼氏としても合格ね!」

 どっか~ん!!
 無防備な状態で、爆弾発言。
 お父さんは完全に虚を衝かれた。
 戸惑い、慌ててしまう。

「は? な、な、な、何ぃ!? ゆ、ゆ、ゆいの彼氏ぃぃ!?」

 お父さん、慌ててる。
 成瀬君、そして白鳥さんを交互に見てる。
 やっぱり、このふたりが付き合っていると思い込んでいたみたい。

 お母さんは、更にたたみかける。

「ええ、そうよ。ね、成瀬君」

「はい!」

 お母さんから同意を求められ、元気に返事をした成瀬君。
 きりっとした顔で、お父さんへ向き直る。

「お父さん!」

「は、はいい……」

「俺、ゆいさんと真面目に交際しています。どうぞ! お許しくださいっ! お願い致しますっ!!」

「あわわわ……」

 まだまだ混乱するお父さんに向かい、成瀬君は、深く深く頭を下げていたのである。