次の週の土曜日。
 今日は成瀬君がウチへ来る日。
 
 約束の時間は午前10時30分。
 3人でランチをしながら、話をしようという事となっている。

 ちなみに予定通り、お父さんは出張で不在。
 成瀬君が来る事も伝えてはいない。
 
 後で、怒るだろうなあ……
 お母さんが『味方』になってくれれば、だいぶ心強い。
 あとは成瀬君を信じるだけ。
 私も全面協力するつもり。

 ……10時30分少し前。

 ピンポーン!
 チャイムが鳴った。
 インターフォンモニターに映っているのは……成瀬君。
 
 あはは、娘の彼氏に初めて会うって事で、お化粧ばっちりしたお母さん。
 少し顔がこわばってる。
 もしかして緊張してる!?
 白鳥さんが来た時とは、また違う雰囲気だ。

「準備はいい? お母さん、成瀬君を迎えに行くよ」
「あ、ゆいっ! 待って!」

 ガチャ。
 開錠し、ドアを開ける。

「来たよ、ゆい」

 そう言って、私へウインクした成瀬君。
 お母さんを見て、礼儀正しくあいさつする。

「初めまして! ゆいさんのお母さんですか? 成瀬悠真です。宜しくお願いします」

 成瀬君、楽葉原のデートの時とはまた違う格好をして来た。
 あの時は、シンプルなシャツにブルージーンズというラフな格好だった。
 でも、とってもカッコ良かった。

 今日は上がギンガムチェックのシャツ、下が渋い色合いをしたグレーのパンツ。
 それにリネン製のネイビージャケット。
 トラッドって感じ?
 またまた、かっこい~!

 まるでメンズファッション雑誌から、抜け出たみたい。

 そんな成瀬君を、お母さんはどう見ているのだろう?

「………………」

 あらら、言葉が出て来ないのか、黙っちゃった。
 何だか、ぼ~っとしてる?
 あいさつをかえさず、うっとりして見とれてる?
 
 苦笑した私だったが……
 成瀬君は礼儀正しく、服装も素敵。
 まずお母さんへのファーストインプレッションは『◎』という事で、心底ホッとしたのである。