白鳥さんが帰った祝日の夜。
 私はお母さんとふたりきりで夕飯を食べていた。

 話題は当然、白鳥さんの事。
 彼女が訪れた時から帰るまで、お母さんは驚きっぱなしだった。
 当然かもしれない。
 家へ呼ぶような友だちが皆無の私が、いきなり綺麗なお嬢様を招いたのだから。

 好奇心旺盛(こうきしんおうせい)なお母さんは、根掘り葉掘り聞いて来る。

「ゆい」

「ん?」

「お母さん、白鳥さんが同級生だとは知っていたけど、どうしてあんなに親しくなったの?」

 えっと……
 まさか、「彼氏の成瀬君がらみで」とかは言えない。

 私はあいまいに答えを戻す。

「うん、ちょっとした事で」

「ちょっとした事?」

「ん。ちょっとした事」

「何よ、ちゃんと教えなさいって」

 多分、突っ込んで来ると思っていたから、やりとりする間に、答えは用意しておいた。

「クラスの女子みんなで、いろいろ遊びに行ったの。ほらこの前、言ったじゃない。楽葉原とか、縦浜とか。今度ファンタジーユートピアへも行くから」

「ふうん。そういえば、ここしばらく、そんな事言って、でかけていたわね」

「でしょ」

 私の答えを聞き、お母さんは納得したみたい。

 ここで会話が終わるかと思ったのに……
 今度は、ほこさきが私へ来た。

「それで、ゆい。今回の白鳥さんの件といい、お前変わったよね?」

「は? 何それ? 変わったって?」

「明るくなった。元気になった。学校の事も、進んでうきうき話すようになった」

 そう来たか!
 でも、大丈夫。

「ええっと、今日来た白鳥さんとか、他にも何人か、クラスに仲よしの友だちが出来たから……かな?」

「それと、ゆい! 最近、急に学校の成績も上がったでしょ?」

「白鳥さん、学年でトップなの。勉強も教えてもらってる」

 私は全ての質問に対し、しれしれっと答えた。

 今度こそ完璧、ばっちり!
 ジ・エンド!
 と思っていたら……

 お母さんは何か、含むように、いたずらっぽく笑った。

「うふふ。お母さんをなめてもらっちゃ困るわよぉ」

「な、何? な、なめるって……」

「ゆい、あなた……彼氏が出来たでしょ?」

 何と!
 お母さんはいきなり!
 ストレートの直球を「ズバン!」と投げ込んで来たのである。