ラノベ、マンガ、アニメの会話だけじゃない、私は白鳥さんのいろいろな身の上話も聞いた。

 幼い頃から厳しくしつけられて来た事。
 小学校の時は女子だけの私立校に通うよう両親から強いられ、中学進学の際、反抗し、けんけんがくがくの上、公立の共学、今の中学校へ通うようになった事。

 その代わり、両親の言いつけで、毎朝、近くまで先ほどの『田中さん』に送り迎えして貰っている事。
 成瀬君が……初恋の相手だった事等々。
 そして……小さな子供の頃からファッションが大好き。
 将来は何かファッション関係の仕事に就きたいと夢を持っている事。

「今日はゆいにいろいろ話して、ホントすっきりした。もしかして、カミングアウトって奴?」

「そっか」

「うん! だから成瀬君の気持ち……今の私には良くわかるの」

「そう……なんだ」

「うん、私も小さい頃から何か好きな事をしようとすると、私らしくないと言われて、あきらめた事も多かったから……でも、もう違う。私は私らしく、素直に生きるわ」

「私らしく、素直に……」

「最近、ママに言われるのよ。私、変わったって」

「白鳥さんが変わった?」

「うん! 最近ママと話すのが楽しいの。悪役令嬢の話で盛り上がるの。今度は、ふたりで姉妹ものを読みたいわ」

「へぇ! 姉妹もの?」

「うん! 当然ママが不幸な姉で、私がいじわるな妹! あは! 盛り上がるわ、きっと!」

 白鳥さんの目がキラキラ。
 少女マンガのヒロインみたい。

「勉強もね、はかどってる! 成績も学年トップになったし! なんかこう毎日が楽しいのよ! パパもご機嫌なの。全部ゆいのおかげだって言っちゃった」

「え? 私の?」

「そしたら、今度ウチへ連れて来なさいって……今度はゆいが遊びに来てねっ!」

「ええっ? 遊びに? 私が白鳥さんの家に?」

「うん! 約束だよっ! ちなみにママは私みたいに、ゆいにラノベ指南して欲しいって!」

「ラノベ指南!? 白鳥さんのお母さんに!?」

「よっろしくう!」

 白鳥さん……変わったなあ。
 なんか、突き抜けたって感じ。
 私も……今度、書いている作品の話をしてみよう。

 それからも、いろいろ会話をしていたら、あっというまに午後5時となった。
 
 同時にピンポーンと、計ったようにチャイムが鳴った。
 迎えに来た、運転手の田中さん……だろう。
  
「では! 失礼致します! 本日はご歓待頂き、ありがとうございました。今後とも宜しくお願い致します」

「ありがとうございます。お嬢様がたいへんお世話になりました!」

 晴れやかな笑顔の白鳥さんは、お迎えに来た運転手の田中さんと一緒に帰って行ったのである。