成瀬君と白鳥さんの話を聞いて、私はびっくり!
 
 へ~!
 そうなんだ!
 知らなかった。
 でも、お父さんとお母さんが凄いなあと思うだけ。
 成瀬君は成瀬君だもの。

 と思ったら、成瀬君もそっけなかった。

「そうだけど……だから?」

 反応が薄い成瀬君に対し、白鳥さんは必死に食い下がる。

「もっとなんていうか、悠真様はおしゃれな食事をしているかなって、雑誌に出てくるような……」

「いやいや、俺は俺。オヤジやオフクロは関係ないよ」

「オヤジやオフクロって、お父様とお母様をそう呼んでいるのですか?」

「ああ、呼んでる。そして学校の勉強は進学の為、仕方なくって感じだし、野球は好きだからやってるんだ」

「………………」

「でも俺はさ、大好物のハムカツ食って、ブラック缶コーヒー飲みながら、これまた大好きなアニメ見て、人気のラノベ読んで、ミーハーにワクワクする方が好きなんだ」

「………………」

「そういう俺にドン引きするやつ、けっこう多いんだ。なんか違うとか言われてさ。どうして? とか何度も聞かれるから、めんどくさくなって、ちょっと演技してたんだ」

 成瀬君は、私にカミングアウトしたのと同じ内容を白鳥さんへ告げた。
 白鳥さんは、またもびっくりし、おずおずと尋ねる。

「わ、わかりました。でもなぜ私にそこまで話してくれるのですか?」

「昨日、ここへ。白鳥さんはわざわざ屋上へ来てくれたんだろ? それで思った。白鳥さんはゆいの……大切な友だちだから。ちゃんと話すべきだってな」

「ゆいの友だから……ちゃんと話す?」

「ああ、俺ゆいに告白したんだ。好きだから付き合ってくれって」

「………………」

「白鳥さんは聞いてるかもしれないけど。俺、大好きなアニメのイベントへ、こっそり行ってひょんな事でゆいと知り合って、心底ホッとしたんだ」

「………………」

「ゆいの前では、俺、演技(えんぎ)しなくてすむ。大好きなアニメやラノベの話も思い切り出来るって」

「………………」

「白鳥さんは可愛いし、素敵な子だと思う」

「………………」

「でもゆいは、俺と同じオタクだから、とっても気が合うんだ。()の自分になれるし、一緒にいると凄く楽しいのさ」

「………………」

「白鳥さん、こんな俺で良ければ、ゆいの友だちになってくれたように、俺とも友だちになってくれないか?」

 成瀬君が自分の本音を告げた上で、白鳥さんに『友だち付き合い』をするように申し入れた。
 対して、白鳥さんも無言でじっと私を見てから、大きく息を吐いた。
 笑顔で頷く。

「………………悠真様、正直に言います。私も同じです。ゆいの前だと、私はとても素直になれるんです」

「そっか……じゃあ俺と同じじゃないか」

「悠真様と同じ……私が」

「そうさ。でも、悠真様と呼ぶのはもうやめてくれないか。呼び捨てで、呼んでくれ。成瀬で構わないから」

「そ、そんな……じゃ、じゃあ、ゆいと同じに……成瀬君と呼びます!」

「おう! 白鳥さん!」

「はい! 成瀬君、私と友だちになってください」

「ははははは! ぜひ!」

「うふふふ! 何か、さっぱりした! 気持ち良いですね」

「ああ、気持ち良いな、白鳥さん」

「うふふ、今日も……天気がいい。ハムカツはおいしくて、コーヒーは苦い。私たち、青春してる! って感じです」

 白鳥さんは青い空を見上げ、そう言うと……
 私に向かって、優しくほほえんだのである。