翌日のお昼休み……
 私と成瀬君、そして白鳥さんは3人で屋上にいた。
 今日も天気は快晴。
 頭上には真っ青な大空が広がっている。

 約束してくれた通り、今日のランチは成瀬君のおごり。
 私達3人は、彼が買ってくれたハムカツサンドをかじり、苦い無糖のブラック缶コーヒーを飲んでいる。

 成瀬君は確信に満ちた顔付きで同意を求めて来る。

「なあ、ハムカツ超うまいだろ? ゆい」

「うん、超おいしい。でも、クリームパンの次にね」

 うん!
 成瀬君の言う通り、確かにハムカツはおいしい!
 だけど、わたしの最大のお気に入りはクリームパン。
 これだけは譲れない。

 可愛くしかめっつらをした成瀬君は次に白鳥さんへ尋ねる。

「はあ? あんだよ、じゃあ白鳥さんは?」

「うふふ、超おいしい! タマゴサンドの次にね」

 あはは!
 またも撃沈(げきちん)
 でも、成瀬君は明るくVサイン。

「何だよ、それ。でもま、いっか。これで白鳥さんとは真の友だちだ。ハムカツマニア協会の正会員だからな」

「あはっ! 真の友だち? 正会員? 何それ?」

 こんな風に会話が出来るようになったのは、成瀬君がはっきり言ってくれたからだ。

 ……お昼休みになってすぐ私と一緒に屋上へ来た白鳥さんは……
 待っていた成瀬君を見て、すごく緊張していた。

 そんな白鳥さんへ、成瀬君は屈託(くったく)のない笑顔を見せた。

「白鳥さん、ありがとう」

「え? ええっ!?」

「急に無理言ったのに来てくれて嬉しいよ」

「そ、そんな!!」

「さあ、ハムカツ食って、マニアになってもらおうか、ハムカツマニア協会の会員にさ」

 事前に私が伝えていたとはいえ、奇妙なお誘いに白鳥さんは戸惑う。

「え、ええっと」

「ちなみに! 俺が大好きなハムカツは中身のハムが薄いやつなんだ。ハムが厚いより薄い方がチープな感じがして好きなんだ」

「………………」

「そして、ころもはサクサクしていないとダメだ。実はさ! ウチの学校の売店で売ってるハムカツサンドは俺の好みにジャストなんだよ。白鳥さん! ぜひ食ってみてくれ!」

 成瀬君がハムカツについて熱く語ると……
 白鳥さんはびっくり。
 しばらく「ぽかん」とし、

「………………うふふ、面白い」

 と子供のように笑った。
 対して、成瀬君もにっこり。

「ははは、面白いか?」

「え、ええ……私が思ってた悠真様のイメージと違う。みんなで遊びに行った時から少しずつそう思っていましたけど」

「どうして?」

「だって……悠真様(ゆうまさま)はとても勉強が出来て、運動神経抜群(うんどうしんけいばつぐん)のスポーツマンで」

「いやいや、俺より勉強が出来て、スポーツが得意なやつはいくらでもいるって」

「でも……悠真様のお父様が有名なカメラマンで、お母様が女優さんや歌手のお客様がたくさんいるメイクアップアーティストだから……」

 成瀬君のお父さんがカメラマンでお母さんがメイクアップアーティスト?
 
 全然知らなかった。
 成瀬君と白鳥さんの話を聞いて、私はびっくり!したのである。