白鳥さんと仲直りした日の夜。
 帰宅して夕食後、部屋に入り、扉を締め切り……
 少し経ってから成瀬君へ電話した。

 もう9時を過ぎた。
 成瀬君は帰宅しているだろうから。

「ゆい、大丈夫か?」

 成瀬君は、根掘り葉掘り聞かなかった。
 ただただ(いた)わってくれた。

 安心した。
 ホッとした。
 その瞬間、涙が「どっ」と出た。

 白鳥さんが現れた事。
 涙を流して謝ってくれた事。
 私も泣いて謝った事。
 抱き合って一緒に泣いた事。

 いっぱいいっぱい、話していた。

「分かった。明日、屋上で3人一緒にランチしよう。俺がおごるから」

「うん……でも良いの?」

「おう! その代わり、ごちそうするのは、無糖のブラック缶コーヒーに、俺が大好きなハムカツサンドだぞ。布教してハムカツマニアをふたり増やしてやる、絶対来いって、白鳥さんへ言っといてくれ。頼んだぜ」

「あはは、何それ? ハムカツマニア?」

「そう! ハムカツマニア協会だ! ゆい、お前も白鳥さんと一緒に入会するんだ。明日も好い天気だから、気持ち良くランチ出来るぞ、じゃあな」

「うん! じゃあね、また明日!」

 電話を切った私は、すぐ白鳥さんへ電話をかけた。

「白鳥さん?」

「ゆい?」

「明日よかったら……3人でランチしない?」

「え? 3人って?」

「白鳥さんと成瀬君と私の3人」

「で、でも……私、ふたりのお邪魔じゃない?」

「全然大丈夫! 成瀬君、白鳥さんと私にブラック缶コーヒーと大好きなハムカツサンドご馳走するから絶対に来てくれって」

「ブラック缶コーヒー? ハムカツサンド!? な、何それ?」

「ハムカツマニア協会……布教して、白鳥さんと私を会員にするって、言ってた」

「あははははははははっ! な、何それっ!? 悠真様(ゆうまさま)ったら、おっかしぃぃ~!」

 あれれ、いつも「ほほほ」とか上品に笑う白鳥さんが?
 ゲラゲラ笑ってる。

 ええっと、とりあえず『返事』を聞かなきゃ。

「ええっと、し、白鳥さん。来るよね、ランチ」

「うん! 行くっ! 絶対に行くっ!」

 おそるおそる聞いた私に対し、白鳥さんは元気良くOKの返事をくれたのである。