予想外だった。
 成瀬君が去った私だけしかいない屋上に、来るはずがない白鳥さんが現れたのだ。

「ゆいっ!」

 白鳥さんは再び私の名を呼んだ。
 そして、ダッシュして私の前に立った。
 やっぱり急いで来たのか、息絶え絶えって、感じだ。
 綺麗な彼女の目には涙がいっぱいたまっていた。

「ごめんねっ! ごめんねっ!」

「白鳥……さん」

「ゆいが悪いわけじゃないのに……私、八つ当たりしてたっ! 自分の想いが届かなくて! 思い通りにいかなくてっ! 悠真様(ゆうまさま)が好きなのは、ゆいなのにっ!」

 仲良くなってからの白鳥さんは……
 いつも私に本音で話してくれる。

 でも、私は彼女ほど、本音で話せていただろうか?
 
 私も勇気を出そう!
 白鳥さんへ、自分の気持ちを素直に言おう!
 
「私こそ、ごめんっ! 白鳥さんがっ! 私を信頼してっ、頼ってくれてっ! 悩みを相談してくれたのにっ! 何もする事が出来なかったっ!」

「そんな事いいのっ! ゆいは、大事な友だちなのっ! 嫌いにならないでっ! 失いたくないっ! 失いたくないのっ!」

 白鳥さん!
 私だって、私だって!
 あなたが大事な友だちなんだっ!

「あ、あ、ありがとぉ!! 白鳥さぁん!! 嫌いになんかならないよっ! 大好きだよっ!」

 泣きじゃくる白鳥さん。
 
 私は白鳥さんに抱き着いて、思い切り泣いていた。
 白鳥さんも、わんわん泣く私をしっかり抱きしめてくれた。
 
 そう、私と白鳥さんは西日が射しこむ屋上で、固く抱き合い、大泣きしていたのである。