成瀬君に告白されるという劇的なお昼休みが終わり……
 自分の教室へ戻った私は、午後一番の授業を受ける。
 
 ちらと斜め後方を見やれば、やはり白鳥さんは元気がない。
 授業もろくに聞いていないみたい。

 私もそう。
 大好きな国語の授業なのに、内容が全く頭へ入らない。

 やがて、授業が終わった。
 短い休み時間。
 その間に、白鳥さんをつかまえ、伝えなければならない。
 放課後に屋上で、成瀬君と3人で話そうって。

 授業が終わると同時に、私は白鳥さんの席へ猛ダッシュした。
 白鳥さんは席に座りっぱなしで「ぼんやり」していた。

「白鳥さん」

「………………」

 返事がない。
 それどころか、白鳥さんは私を見ようともしない。

 いつもなら、「打てば響け!」とばかりに、彼女の元気の良い言葉が戻って来るのに。
 でも、私は伝えなくてはならない。

「ねぇ、白鳥さん、放課後に話があるの。午後3時すぎに屋上へ来てくれない? 成瀬君、部活があるから30分くらいしか時間がないけれど、3人で話したい」

「……………………行かない」

 白鳥さんは長い沈黙の後、短く強い拒否の言葉を戻した。
 予想された答えだった。

 当然かもしれない。
 屋上へ行ったって、大好きな成瀬君と話したって、白鳥さんの望みは……
けして叶わないのだから。

 小さくため息を吐いた私は「ごめんね」という言葉を飲み込むと、白鳥さんの席から、そっと離れたのである。