「いや、俺ひとりで言うよ。その方がいいと思う」

 そう言った成瀬君の笑顔を見て考えた。
 白鳥さんは今や、私の大切な友だちとなった。

 それなのに、成瀬君へ安易に『丸投げ』しても良いのだろうか?

 だけど……
 成瀬君が話をする時、私が目の前に居ない方が、白鳥さんは傷つかない……のだろうか?
 一体、どうしたら良いの?

 いろいろな思いが心をよぎる。
 迷った、迷ったけど……決めた。
 私から白鳥さんへ話すって。

「ねぇ、成瀬君」

「おう! なんだ、ゆい」

「白鳥さんも、私の大事な友だちなんだ。実は事前にいろいろ相談された。成瀬君の事が好きなんだって」

「そうか……実は俺も友だちから、白鳥さんの件では相談を受けているよ」

 成瀬君が友だちから、白鳥さんの件で相談を受けている。
 
 多分、白鳥さんが言っていた『成瀬君の友だち』の事だろう。
 白鳥さんへ告白したという男子……

「まず私から、白鳥さんへ話すよ」

 私が決意を告げたら、成瀬君はほんの少しだけ考える。
 そして優しく微笑んでくれた。

「分かった。白鳥さんに対するゆいの気持ちを大事にするよ」

「ありがとう」

「じゃあ、放課後にここでまた話そう。部活があるからあまり時間ないけど、授業が終わって午後3時すぎに、……30分ちょっとくらいならOKだ。白鳥さんを入れて3人でさ……俺から話があるって伝えてくれるかな」

「ありがとう。そうしよう」

 今は12時50分。
 お昼休みが終わるまで、あと10分ある。

 ふたりで並んで座っている。
 さっきからず~っと手を握ったまま。

 成瀬君の手は温かい。
 時たま、そっと、きゅっと、握ってくれて……とても安心する。
 勇気が湧いて来る。
 成瀬君が居れば、私はちゃんと白鳥さんへ話をする事が出来そうだ。

 私たちは、昼休みが終わるぎりぎりまで、手をつなぎ並んで座っていたのである。