「ゆい、ありがとう、彼女になってくれて」
「私の方こそ、彼になってくれてありがとう」

 お昼休みがもう少しで終わる……
 
 私と成瀬君は、()が「さんさん」とふりそそぐ屋上で、手をつないで座っている。

 今日のランチはいつもとはまったく違うランチとなった。
 私達は、単なる友だちではなくなったのだ。
 もっと近しい関係となった。

 まだ第一歩を踏み出したばかり。
 
 だけど、ふたりで手を取り合って歩いて行く。
 これからは、ずっとふたり……何となくそんな気がした。

「ゆうま……うう、すぐに名前で呼べないよ。ご、ごめんね!」

「ははは、いいさ、俺をどう呼ぶなんて論点はそこじゃない」

「わお! 論点って、成瀬君、むずかしい事言うんだね」

「ははは、たまにね」

 成瀬君は微笑むと、ひどく真面目な顔となった。
 何を考えているのか、私にはすぐ分かった。

「白鳥さん……ケアしないとな」

「うん……彼女、成瀬君の事好きだって……」

「うん、雰囲気見て、そしてランチに混ざりたいと言われて分かった。告白されるんだなって」

「………………」

「でも、俺はゆいが好きだ。もしも白鳥さんから告白されても当然断る、ゆいの目の前でな」

「それって……白鳥さんがダメージ大きい……」

「ああ、白鳥さんはとても傷つくだろう? だから先手を打った」

「先手……そっか」

 ようやく分かった。
 私は記憶をたぐった。
 あの時、成瀬君はあえて「大事な」を強調したのだ。

 成瀬君は更に私へ言う。

「何回も、話しているから分かる。白鳥さんは鈍い子じゃないと思う。ゆいに大事な大事な話があると強く言ったから、俺の気持ちに気付いているはずだ」

「え、ええ……」

「後で白鳥さんには、直接俺から言うよ。俺の方が好きになって、告白し、ゆいと付き合う事になったって」

「成瀬君」

「俺、最初から今日、告白するって決めていた。これは本当の事。だから、白鳥さんの告白は関係ないんだ。それも言うつもりさ」

「私は……一緒に、話した方がいいのかな?」

「いや、俺ひとりで言うよ。その方がいいと思う」

 成瀬君はそう言うと、私の手を「きゅっ」と握り、にっこりと笑ったのである。