遂に! 遂にっ!
 成瀬君に告白された!!

 されてしまった。

 で、でも!
 し、信じられないっ!

 真っ青な、雲ひとつない空。
 吹き抜ける風が頬を触る、私と成瀬君の外には誰もいない屋上。
 これは確かにリアルな現実。

 でもでもっ!
 まるで夢の中にいるみたいっ!
 
 成瀬君から告白されるなんて!
 まったく、現実感がないっ!
 
 だって!
 ありえないっ!

 私は「オタクなモブでフツーの女子」だ。

 対して、成瀬君は誰が見たって「万能ハイスペックなイケメン君」……なんだもの。

 ふと、白鳥さんの綺麗(きれい)な顔が浮かんだ。
 成瀬君と付き合うのはああいう美人な子……だ。
 「私じゃ釣り合わないよ」と内なる声がささやく。

 呆然(ぼうぜん)としている私。
 と、ここでいきなり成瀬君が言う。

「ゆい、手を出して、早くっ」

 「ノー」なんか絶対に受け付けない。
 有無を言わさないって感じ。
 ちょっと強引な命令口調……珍しく、ちょっとだけ俺様?
 他の男子なら、絶対にお断り、でも、成瀬君ならイヤじゃない。

 私は「おずおず」という感じで手を差し出す。

「う、うん」

 成瀬君は、私の手をしっかり、がっしり握った。
 少し強く、でも痛くしない。
 私をいたわる優しさが、握った手から伝わって来る。

 成瀬君の手は大きくて温かい……気持ちが落ち着く、ホッとする。
 
 そして手を握られて嬉しい。

 分かった。
 やっぱり、私は成瀬君が好きなんだ。

 成瀬君がまっすぐに私を見る。
 まるで射抜(いぬ)くように私を見る。
 綺麗(きれい)なブラウンの瞳だ。

「ゆいが俺の手を引っ張ってくれたんだ。だから俺、素直になれた! もう離さないっ!」

「成瀬君……」

「ゆい! 大事な事だから、何度でも言うぞ! 俺の彼女になってくれ!」

 ああ、成瀬君がはっきりと言ってくれた。
 私も同じ。
 勇気を……貰った。

「……はいっ!!」

 再び、成瀬君から告白され……
 私は手を握られながら、成瀬君の瞳を見つめ、はっきりと返事をしていたのである。