初めて呼びに来た日から、恒例となってしまった。
 昼休みになると、成瀬君は私のクラスにやって来るのだ。
 
 成瀬君が私をかまうのに、クラスの女子達から見れば、私の方が、
 まるで「かまってちゃん」

「お~い、ゆい~! 一緒にメシくおうぜぇ」

 いつの間にか、フツーに日常となってしまった光景。
 でも今日は少し違う。

 今日のランチは白鳥さんも誘う事となっている。
 そして彼女は、成瀬君へ『告白』するはずなのだ。

「成瀬君……今日は」

「うん? どうした都合悪いのか?」

「ううん……違う」

 いつもなら、「ぽんぽん」と出て来る言葉が……出て来ない。
 どうしてだろう?

 白鳥さんは……素敵な女子。
 最初はいろいろ意地悪されて、辛かったけど……
 話して分かり合えた今は、『親友』に近い子。

 私はせいいっぱい、彼女の恋を応援してあげたい。
 だから、言うしかない。

「え、ええっと……成瀬君」

「おう!」

「し、白鳥さんが一緒にランチしたいって、わ、私達と」

「へぇ、そうか」

 成瀬君は特に驚いた様子もなく、短く言葉を戻しただけだった。

 そんなやりとりをしているところへ、白鳥さんがやって来た。
 白鳥さんにとって、成瀬君は『特別』(あこが)れの相手。
 素敵な男子から『告白』はされたが、成瀬君への『想い』は変えられない。

 小さな手を「ぎゅっ」と握りしめた白鳥さんは、ほおを(あか)()め、言う。

「そ、そうなの。わ、私、ランチを一緒にしたい……」

 しかし……
 成瀬君は、柔らかく断った。

「白鳥さん、もうしわけない」

「え?」

「今日はさ、ゆいに大事な大事な話があるんだ」

 成瀬君は大事を……なぜか2回も言った。
 対して、白鳥さんは成瀬君の言葉の意味を受け取ったらしい。

「そ、そうなんだ……大事な大事な話……なのね」

「ああ、そうだ。ごめんな。じゃあ、行くぞ、ゆい」

「え、ええ……」

 私へ相談する事も、悩みに悩んだに違いない。
 白鳥さんの『決断』は、空振りに終わってしまった……

 辛そうにうつむく白鳥さんを残し……
 私と成瀬君は、いつものように売店経由で、屋上へ向かったのである。